君がいないと落ち着かない

3人の女子達はそれぞれに長い髪を垂らして毛先がカールさせている。可愛い顔つきだが、騒がしくなったときはまるで、興奮した猿を思わせる。
「彼女なんていないよーん」
背中を反らして天井を見上げると、茶色のシミが点々とあった。
「作んないの?可愛い子知ってるよ」
「いらね、デートする度に奢ってくれるんだったらいいよん」
「最低~」
そのままその3人は晶や柊一郎達と話し始め、時々千尋に話を振るようして休み時間を埋めていった。
6時間目も終わり、掃除の時間になった。出席番号が小さい順に男女5人ずつ1班に分かれて行われる掃除で、1班の千尋はほうきの柄に前屈みになりながら考えていた。彼女は何組なのだろうか、もう帰ってしまったんだろうか。モヤモヤとした雲が体の周りにまとわりついているように段々と背中が丸くなる気がした。
「榎本!掃除しろ」
「うぇーい」
その場でほうきを動かす。机の間を曲がりくねって班の人はゴミを集める。


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