君がいないと落ち着かない

掃除も終わり、エナメルのバックを持って部活に向かう。すれ違う男子や女子が声を掛けてくれる。全てではないが、大半の人が近付いて来てくれた。あの子もこんな風に声を掛けてくれればいいのにと思う。
「コーンポタージュ飲みて~」
女子の声が聞こえた。千尋のすぐ下を下りている女子2人の右側にいる肩ぐらいまでのショートボブらしい髪型の子が言ったみたいだった。おどけた調子の話し方に親しみを感じる。階段の踊り場で2人の横顔が見れた。ぱっちりと大きな目にふっくらした唇、白い肌なうえに林檎みたいな赤で頬をやんわりと染めている。“彼女だ!”一緒にいる子は、研修の時の3人とは違っているがあの夢にまで出てきた無防備な彼女は間違いなかった。
後ろ姿を眺めているだけでも、彼女と一緒にいたらどれほど楽しいのかが分かった気がした。絶えず隣の子は笑っていて、苦笑いとか愛想笑いとでもない、はっきりと心の底から出てくる笑い声だった。


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