君がいないと落ち着かない

絡んだ視線を解いて階段を上がっていく間、頭には彼の顔が映っていた。今度は心臓じゃなくて、もっと違う何かが締め付けられる。片手でグッと握られているような感覚で息が苦しくなった。


それからあの男子との接触はなかった。廊下でも教室でも昇降口の下駄箱でも合うことは無くなった。人気者らしく、彼のことを「ちー君」と呼ぶことを知った。バスケ部以外では悪さばかりする悪ガキだと言うことも分かった。
高校生初めての中間試験も終わり、期末試験も無事終わった。

「夏休みは遊びまくろう!」
河崎がお弁当を食べてる時間に、箸を持った左手で机を叩いて、宣言口調で声を放った。
彼女の向かいに座る林が河崎に向けていた視線を下に流してめんどくさそうにため息をついた。
もとから出掛けることが嫌いな忍は黙ったまま2人に視線を向けずにお弁当をつついている。れー子は口に水筒を近付けて河崎と林を往復するように盗み見ている。


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