君がいないと落ち着かない
「すればいいんじゃん?」
林が河崎をぱっちり開いた目を細めて睨み付けながら、突っ掛った口調で河崎に言った。それを聞いた河崎が眉間にシワを寄せて渋い顔をして言い返した。
「まぁ、しますけど?」
ふてくされた顔を俯けて止めていた左手を動かしてお弁当を食べ始めた。
なんとなく4人の上には重い空気が漂った。周りから流れ込む明るい声が更に空気の重さを際立たせた。しばらく黙ったままでいると横に人の気配を感じた。同じクラスで、今忍の後ろの席の松浦だった。
どことなく近寄り難くて、説明書を持っていても理解できないような人だ。
『青倉さん』
「はい?」
松浦は忍より少し高いだけの身長だけど、座ったまま見上げると手を伸ばしても頭までは届かないくらいに差が合った。
「時間かかってごめん。面白かった、ありがとう」
一度も笑顔を見せないまま文字を並べると、机に黒いカバーに白いアルファベットが綴られた本を置いた。忍が貸した本だ。
「はい、最終巻」