君がいないと落ち着かない

バックから、松浦が机の上に置いた本とは真逆の白いカバーに黒いアルファベットの文字が書かれた本を渡した。
「ありがと」
特に何の抑揚もなくお礼を言うと受け取った左手から右手に本を持ち変えて、自分の席に戻って行った。
「本貸してたの?」
「うん」
れー子が重い空気を吹き飛ばそうと頑張って口を開いてくれたが、特に弾むような内容の会話では無かったために続かないまま終わった。忍とれー子の間で向かい合わせに座る2人から淀み出てくる重苦しい雰囲気が一層深みを増した。
最近、林の所属する部活の内容がキツいらしく疲れが溜まり苛立ちあらわにするようになり、基本楽観的で人の状態など気にせず突っ走る河崎の言動はピリピリしてる林には危ない人物だったりする。「シノちゃんは?夏休みどっか行くの?」
「あー、本買いに行こうかしらねー」
お弁当を食べ終え林が、雰囲気を重くしたことに悪気を感じたのか蓋を閉めてから聞いてきた。


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