君がいないと落ち着かない
「千尋!部室で着替えろ!」
体育館には5箇所の出入口があって、1つは舞台とは反対側にある大きな両側に開く扉はそのまま外にも出られるドアと教室の並ぶ本館と繋がる廊下に出る、2つがある。残りの4箇所は舞台側の両壁に1つずつと後ろの扉側にも1つずつ引き戸風のドアがある。舞台を向いて右側に学校があり、左側には部室棟が並んでいる。
右側の後ろの開いたドアにいる先輩の4人のうち1人が千尋に向かって言ってきたのは2年の副部長だった。ノリのいい先輩だが部活中はやっぱり怖いし、プレーだって凄く上手だ。長身で細身な先輩はボールを持っていても軽やかな走りと身動きで相手を交わしていく姿は同性でも見惚れてしまうほどだ。
「はーい」
「副部長!目の前に露出狂がいまーす」
隣で智弥が声を上げた。
「変質者扱いだな榎本」
3年の部長が千尋の肩に手を置いて頬笑みながら言った。部長の大人な雰囲気は他の3年よりも大人びて見える。