君がいないと落ち着かない

「ハハッ」
千尋は苦笑いしながら部長の背中を眺めた。バスケで絞られた引き締まった背中を学ラン越しに視た。部長としての威厳と仲間や後輩、学校に応援してくれる人達の期待や信頼を肩に乗せて、千尋達を引っ張っているという部長の凄さが空気を伝い、汗で湿った肌にピシピシと感じた。
「千尋、もう行こうぜ」
ジッと部長の背中から広がるものから目を離すことが出来なかった千尋を智弥が急かし、もう人の姿が消えた体育館を後にした。


「はっ、最ッ高!」
「幸せだわ」
口々に目の前にあるラーメンの味を「おいしい」という言葉を使わずに誉め讃えた。太めの麺に絡まるスープが下に熱さと濃厚さの刺激を与え、麺を噛み締める歯は喜んで顎を動かす。その幸福感に酔い痴れながら丼の中にあった麺もスープも食べ尽くした。
お勘定を払い、店を後にした。


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