君がいないと落ち着かない
「あの本屋に寄ろう」
車道側を歩いていた智弥が左手で千尋の右側にそびえ立つ家やファーストフード店が並んでいる途中に大きな[本]と描かれた看板を指差した。
大きな白い四角い建物には[三毛猫書店]と掛かれている。
「千尋、入るよ」
智弥がその外観に見取れている千尋に声を掛けてから先に中に入った。
「智弥ー、俺ウロウロしてんな」
前を歩く智弥に告げると右手を上げて返事を返した。至る所に列を組みながら色んな形の棚が並んでいる。そこには[新作]やら[ベストセラー]と書かれた札が棚に貼りついて本を売り込んでいた。お行儀よく並べられ、積まれて人間の手に取られるまで息を止めているようにも見えた。
奥に並ぶ高く横幅も広い、ぎっしり詰まった本棚を眺めた。文庫ごとに違う色の背表紙が並び、見たことのある作者の名前が棚から飛び出している。奥の奥にある壁際にも横に続く棚が並んで、そこにも本がぎっしりと詰められている。