君がいないと落ち着かない

誰だろ?
千尋達の通う森山高等学校は女子はリボンと靴下のポイントが、男子は学ランの襟に着いたポイントが学年ごとに色分けされていて、千尋達1年生は緑で2年が青、3年が黄色となっている。
本を眺め、パラパラとページをめくる彼女の靴下には緑色の刺繍が施されていた。スカートの丈は膝の真ん中くらいまであって、そこから紺色の靴下に包まれたふくらはぎから足首の線は細く、まるで光り輝く背景の中から浮かび上がるシルエットのようだった。
髪の毛で見えない顔を想像した。
パッと見は冴えない影にいる女子だったが千尋はその場を離れる気にはなれず、彼女の後ろの棚を眺めるフリをしながらその子を盗み見ていた。
すると彼女の左手が持ち上がり、顔を隠していた横の髪の毛を耳に掛けた。単純なことでもそれは凄く高貴な動作だと千尋には思えた。女らしい丸みのある額や鼻の線にふっくらした唇、顎先からはシャープな線が耳下らへんまで繋がって首元のラインが少しだけ見えた。


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