君がいないと落ち着かない

それでも顔はしっかりと見ることが出来なかった。後ろに振り返り彼女と同じ向きになって棚の前に立った。行く手を阻む壁のように立つ本棚を見上げてからチラリと視線を横に向けた。
手元にある本からまた、2人の前に立つ棚に向けて顔を上げたのは“青倉さん”だった。
かぶさる睫毛の奥で潤んだ瞳がぎっしり並べられた本を眺めている姿は幸せに満ち溢れているように思えた。
制服を着ているということは彼女は学校の帰り道がこれから向かうかのどちらかであるということになる。もし帰り道なら千尋が部活で走り回っている間に彼女も部活で学校に来ていたということが千尋を嬉しくさせた。
青倉さんがもし今日の午前中に部活をやっていたのだとしたら、お互い知らない人同士であったとしても、同じ時間を同じ学校という場所で過ごしたことになる。
身体中から込み上げる嬉しさから彼女の姿をしっかりと視界に入れた。
我ながら自分が気持ち悪いと思った。


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