君がいないと落ち着かない

彼女の右手が持つ本は、前に智弥が同じクラスの女子から借りた時に読んでいた本と同じぐらいの大きさだったが、厚さは若干薄く見えたがどちらにしても分厚いことには変わりなかった。
黒ベースのカバーにはアルファベットで[JYANDOL-Ⅰ-]と金色で描かれている。ホラーかミステリーの本なのだと千尋は思った。
彼女は視線を黒い本に戻してから数秒間ジッと右手に持つものを見てからそっとそれを本棚に戻し、その場から千尋とは反対の建物の中の方へ歩いて行ってしまった。
取り残された千尋は離れていく女の子の後ろ姿を見ていた。またいつ逢えるのかと考えながら寂しさに視線を天井のライトに照らされて光る床に下ろした。
ふと彼女の居た場所に千尋は立った。本棚と向き合って黒いカバーの本を見つけだし、本棚から抜き出して手に取るとずしりと本が寄り掛かってきた。
左手に持ちかえてカバーを隅々から眺め、表紙をめくった。


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