君がいないと落ち着かない

残された忍は本を顔の前へ持っていき、蛍光灯で美しく表情を変えるカバーを色んな形で楽しんでからレジに向かった。
下りの電車に乗っている間、運良く座れた忍は紙袋で包まれた本を取り出して膝の上へ乗せた。
表紙を開き2ページ程めくった所で目次が出てきた。
目次を読み附属で本に付いている紐をそこに挟んで、更にページをめくって登場人物を読んでから次のページの本文に入った。




「また本読んでるの?」
飽きれた声が頭に降ってきた。
俯いて読んでいた行から目を離して机の前に立つれー子と目が合った。
「うん、面白いよ」
忍は本を読めるという幸せを滲ませる笑顔で笑った。
「んー、分かるけど…ほどほどにしとかないとまた林が機嫌そこねるよ?」


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