君がいないと落ち着かない

そう言ったれー子は、林の座る一番端の廊下側の列の一番前を見た。れー子に続いて忍も林を見る。河崎が林の机の前に立って楽しそうに2人で話している。
別に怒っているような感じは見て取れないがれー子が言うなら違いない。
れー子は人の感情を痛いほど感じ取ってくれる。本人には重荷かも知れないがこちらにとっては凄く有難い。
本にお気に入りの猫の栞を挟んだ。忍が自分で買ったものだ。ステンレス製で猫が丸くなって寝ている姿のシルエットだ。目や模様などが分からない分、その丸み帯びた体の曲線からは愛らしさを感じる。本を閉じてバックにしまい、れー子と2人で林達の元へ向かった。

夏休みは終わっていた。学生にとって一大イベントである長期休みは呆気なく過ぎ去って行った。
JYANDOLは再発行のため-Ⅱ-が出たのがつい最近だったおかげで忍はお預けをくらい、夏休みの大半は手の平サイズの薄い本を何冊も貪るかのように読み漁った。


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