君がいないと落ち着かない

机を乗り越えたことへの後悔と描いていたものを粉々にさせられ、絶望というものを思い知るはめになる。
千尋は一度、夏井達と4人で屋上へ行ったことがあるがそれからは一度も行ってないし、行きたがらない。
鳥の糞や羽が散らばって、影になった場所には水溜まりの場所には苔が生え、とてもじゃないけど座りたくない地面が広がる屋上だ。

ふと携帯から目を外して時計を見ると、そろそろ智弥と約束している時間に迫っていた。
席を立ち、カバンを背負って隣にある2組の教室へ向かった。
廊下には人の気配が全く無かったが、2組の教室には明かりが付いていた。
智弥が戻っているのだと思い、階段側、教室にある教卓とは反対のドアを開けた。
そこに智弥は居なかった。
いるのは机の上に置いた深緑の分厚い本に手を添えて、千尋を驚いた表情で見つめる青倉さんだった。
大きい瞳は千尋を捕え、細い線ながらも整った鼻にぽってりした唇。こんなにもしっかり彼女の顔を見たことは無かった。


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