君がいないと落ち着かない
まさか青倉さんまでもが聞いてくるとは思わなかったし自分の噂を耳にしているということや、それを覚えていてくれたことが千尋は嬉しかった。
あの冗談を鵜呑みにして言い振らした奴に感謝するほどだ。
もっと彼女と話していたいという欲から智弥のことを忘れ、彼女に対してこんな言葉を口にしていた。
「何でそんなことを聞くんすか?俺みたいな迷惑な奴は辞めてくれた方が先生達や皆も喜ぶでしょう?」
我ながらひねくれた奴だとも思った。
でも、俺みたいな注意ばかりされているような奴に対してどう思っているのかが知りたかった。
彼女は千尋の目を見つめながら訴えかけるように言った。
「そんなことを言わないでください。その言葉をいつもあなたと一緒にいる人達が聞いたら悲しむと思います。」
千尋を離さない瞼に包まれた大きな黒い瞳が光って潤んでいるように思えた。千尋は焦って近寄ろうとしたが背中をそのままドアの柱に預けながら言った。