君がいないと落ち着かない
「あなたは皆に好かれています」
彼と目が合った。
茶色掛かった瞳が絡まってくる。
「あなたが辞めてしまったら、皆寂しがると思う…」
鼻の奥がツンとして、語尾が小さくなってしまった。
涙が出そうだったが自分が傷つけたのに泣くわけにはいかない。
グッと涙を堪えていると彼の薄い唇が動いた。
「あなたは寂しいですか?」
首を傾け忍に問い掛けてくる。
少し驚いて視線を背けたが、すぐに合わせて言った。
「分かんないけれど…、辞めてしまうのは嫌です」
酷く曖昧な答えだとは分かっていたが他にこの感情を言葉で表すことが出来ない。
彼が学校を辞めてしまったら、きっと忍の中で彼の存在は薄れ、消えてしまうだろう。それが嫌だった。
「辞めませんよ」
千尋は忍に向けて柔らかく微笑みかけて言った。