君がいないと落ち着かない
満足気に微笑む千尋は、小動物のように愛らしかった。
「ありがとう」
本を見たまま彼が呟いた。
「……さっきの続き何すけど…」
「はい?」
「…俺に学校辞められるのは嫌って言ってましたよね?」
「はい」
「俺は皆に好かれているとも言いましたよね?」
「…言いました」
「それって、青倉さんもってことですよね?」
「…」
忍は話が徐々にズレているように感じた。
「もう1回、あれを言ってくれませんか?」
自分の太ももに手を置いて背筋を伸ばし、忍を見据えて言った。
何のことだ?と眉を潜めると、彼は「どこにも生きませんよね?です」と2人以外に誰もいないのに声を潜ませて言った。
しぶしぶ忍は口を開き、千尋の望む言葉を繰り返した。
「どこにも行きませんよね?」