君がいないと落ち着かない
サラリーマンや大学生がせかせかと足を動かしている。
夢だからか、ここが駅の前だと分かった。
千尋は1人だけなのか…、ふと場面が変わって目の前に青倉忍が立っている。
制服姿の彼女は寒そうに辺りを見回したり、髪の毛を手で梳かしたりしてソワソワと落ち着かない様子だった。
何故、ここに彼女がいるのか分からなかった。
「………好きです」
千尋の口から発した言葉だった。
「―――――――」
彼女の声がうつむく千尋の頭に降りかかったが、何を言ってるのか全く分からなかった。
そこから千尋の夢は声が聞き取れなくなってしまった。
千尋自身の声も彼女の声も、ぽってりした唇は動いているのに、唇が触れるその感触はあるのに聞こえない。
何を話しているのだろうか。
自分の夢なのに声が聞こえないなんて、千尋は沸々と煮える苛立ちを覚えながら勢いに任せて声を上げた。
「君は何て言っているんだ!」