君がいないと落ち着かない

次の休み時間が始まってすぐに榊が千尋の背中に乗り掛かりながら言ってきた。
冷たく返してから机の引き出しからJYANDOLの本を取り出す。
千尋の肩越しに伸ばした榊の顔も黒いカバーの本をジッと見ているようだ。
「次、青倉忍に会ったら告っちゃえば?」
「は?何言ってんの?」
身を退いて彼の横顔を見つめていると、彼はこちらを向いて千尋を見た。
「付き合いたいんだろ?呼び出すんでもいいけど…」
俺が彼女に告る…?
さっき観た夢の映像と現実に戻って思い描いた告白の場面とが混ざりあい、頭の中がぐちゃぐちゃになってきて焦ってきた。
また顔が熱くなってきた。
「勝手に話を進めるなよ…」
「いいじゃん、フられてこいよ」
「黙れ、分かんないだろ!」
頬にまだ熱を籠もらせながら千尋が歯向かうと、榊は体勢を直して制服のズボンのポケットに手を突っ込んで言った。
「別にオッケー貰ったならそれで幸せハッピーエンドじゃん?」


< 88 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop