オフィスラヴ-鬼上司の対処方法ー
「本当にすまない」

社長が私の目を見て頭を深く下げた。

「神楽坂社長、お顔を上げて下さい」

「しかし…俺は君を傷つけた・・・」

「いえ、傷ついてなんかいませんよ」

「…紗耶香が今日から社長秘書として暫くバイトするコトになって…君も紗耶香と顔を合わせる機会があると思う。その度に君に辛い思いさせるかと思うと心が痛んで」

「そうなんですか・・・」

私はこれ以上言葉が出て来ず、黙って隣に座る有栖川部長にフォローを求めた。


「神楽坂社長、お気遣いありがとございます。綾部には俺が付いていますので安心して下さい」

「有栖川部長・・・」

「私の父親と綾部の母親は再婚しました。血は繋がっていませんが、俺達は義理の兄と妹。兄として…綾部を支えて行きます。ですから、社長室にお戻りください」


「そうか・・・」

神楽坂社長は部長に諭されて、ソファから腰を上げた。

「俺は社長をエレベーターホールまで送る。綾部は仕事に戻りなさい」

「でも・・・」

「これは部長命令だ!」

久し振りに見た部長の鬼の目。

でも、その瞳には私の気遣いが溢れていた。

< 88 / 118 >

この作品をシェア

pagetop