恋愛モノ短編集
昼前の穏やかな時間を持て余していた私は、小難しい本を片手に公園の木陰で仕事の疲れを癒していた。


しかしまさか、顔面にサッカーボールを命中させる代物が潜んでいるとは到底気が付かなかった。私は鼻の下に指を当ててその指を見て、鼻血が出ていないか確認した。


一度では確信が持てなかったので、二度、三度とそれを繰り返す。


三度も同じことをすることの意味は先程考えたばかりだったことはまだ覚えていたので、それを考える必要はなかった。


代わりに、彼に何と言おうかと頭を悩ませた。


「ごめんなさい、本当にごめんなさい!お詫びになんでもしますから!」


彼がそんなことを言ったもので、私の頭、否、私の小腹は私にこう告げさせた。


「じゃあ、おやつにケーキでも・・・。」


ご馳走してください、なんて言う暇を私に与えずに、彼はすぐに私の唇を塞いだ。
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