恋愛モノ短編集
甘い匂い。


スポーツをしていたはずのこの人から、何故こんな匂いがするのだろう。


シャンプーだろうか、それとも香水?


色んなことが頭を駆け巡ったけれど、本当の答えは私にはわからない。


やがて、彼は私から離れた。


驚きは、今になってやってきた。


今すぐにでも自転車で丘を叫びながら駆け下りたいような、そんな気分になった。


「これで、どうですか?」


彼は、私の顔を覗き込んで尋ねた。


凛とした、まだ幼い顔だったけれど、来年二十歳を迎える私と同じような年齢に感じた。
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