恋愛モノ短編集
私が、この私が、何も考えずに次の行動に移っていた。


最初からこうするはずだったように、最初からこうなるようにされていたかのように。


私は少し背伸びをして、彼に届くようにした。


それも無意識の内で、目を閉じたのも無意識の内だった。


私と彼の距離が零になっているこの時、この瞬間、私は心の底から幸せを感じた。


これまで生きてきた人生の中で、五本の指に入る程の幸せだった。


見ず知らずの赤の他人が私に好意を持ち、それに気付いた私も何時の間にか彼に好意を持っていた。


その上でのこの行動なのだから、どこにも間違いはないはずだ。


私たちは、どちらからともなく歩き出した。
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