闇ノ花
「小松」
「何?」
山崎がいきなり立ち止まり、私の方を向いてきた。
それから、苦無を三つ渡してくる。
ひんやりとしたそれを手に持ち、山崎を見つめた。
……何をするんだろう?
「暗く、狭く、動きづらい」
「……。え?」
「外で監視する場合、町に紛れる為、殆どがそのような着流しだ。俺が着ているような物だと怪しまれるのは必定。新撰組の密偵である事を敵やそこらの人に知られてはいけない」
「うん……はい」
あまりにも真剣な声で言われ、つい敬語になってしまう。
「それから、昼だけ監視をするというわけではない。もちろん、どこかの店の天井裏に潜んで様子を窺う事もある」