闇ノ花
「嘘でしょ、山南さん……」
とある時代劇を思い出す。
テレビ画面の中で、新撰組役の俳優達が騒いでいた。
この、小さな紙を見て。
その内容を……私は、覚えていた。
それから、この時代に来たばかりの時、沖田さんに言われた言葉。
『局中法度二つ目、“局ヲ脱スルヲ不許”』
『何日もいなくなれば、脱走と見なして切腹』
この小さな紙には……山南さんの字で、こう短く書いてあった。
──『江戸へ行きます』