闇ノ花
「はい。……新撰組の為に死ねるのなら、本望です」
もしも、山南さんの脱走を見逃していたら。
新撰組の結束が乱れるのは必定だった。
山南さんは……穏やかな表情で、近藤さんに頭を下げた。
あぁ、これが本当の武士なんだろうと。
山南さんは逃げずに帰ってきた。
むしろ望んでいたのかもしれない……新撰組が自分を、探してくれる事を。
新撰組の為に腹を斬る事を。
山南さんは前川邸に移され、切腹は今日の夕刻に決まった。
……嫌だ。
山南さんが死ぬのは嫌だ……。
だけど、これは新撰組の規律だ。
破る事は許されない。
それに……山南さんが、自ら望んでいるのなら。
私は何も言えなかった。
──これが新撰組の男なんだと、そう感じた。