闇ノ花
だけど……本当にもう時間はない。
「こっちです」
私は明里さんを連れて歩き出した。
そして山南さんがいるであろう、前川邸の出窓に向かう。
ここです、という意味を込めて明里さんを見つめた。
明里さんは小さく頷き、出窓の前に立つ。
それから、一つ深呼吸をして軽く出窓を叩いた。
「……山南はん?そこにおるんやろ?」
そう明里さんが小さく声をかけると、スッと出窓が開いた。
出窓から顔を見せるなり、驚いたような表情を見せる山南さん。
「明里、どうしてここに……」