闇ノ花




「会いたかったからどす。前にうち、あんさんに言うた事あるやろ?会いたくなったらいつでも飛んで行きますえって」





明里さんはそう言って柔和に微笑んだ。


あれ……知らないのかな?


すると、明里さんは赤色の綺麗な着物から、一本の簪を取り出す。





「それは……」


「山南はんがくれた簪や。ふふ、嬉しかったなぁ……付けてもろて、ええどすか?」





明里さんはそう言って、山南さんに簪を渡す。


桜の飾りがついた簪。


それを山南さんは受け取り、出窓越しに……明里さんの髪に挿した。


きらきらと、簪が夕日に染まる。


明里さんは簪に触り、また微笑んだ。




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