闇ノ花
山南さんは優しく笑った。
「……いつか、行きましょうか」
「ほんま?……ふふ、約束は破ったらあきまへんえ?」
「あぁ……」
明里さんが差し出した小指に、山南さんも指を絡める。
もう、時間は迫っていた。
山南さんは、そろそろだと言うように、明里さんの手をゆっくりと離す。
「ほんなら、また。山南はん」
柔らかく笑う明里さんに、山南さんも微笑み返した。
「また、逢いましょう──」
山南さんはそう言い……スッと、出窓の扉を閉めた。
足音が遠ざかり、もうこの出窓の向こうから山南さんの気配が消えた。
その途端……明里さんは、地面に崩れ落ちた。