闇ノ花




山南さんは優しく笑った。





「……いつか、行きましょうか」


「ほんま?……ふふ、約束は破ったらあきまへんえ?」


「あぁ……」





明里さんが差し出した小指に、山南さんも指を絡める。


もう、時間は迫っていた。


山南さんは、そろそろだと言うように、明里さんの手をゆっくりと離す。





「ほんなら、また。山南はん」





柔らかく笑う明里さんに、山南さんも微笑み返した。





「また、逢いましょう──」





山南さんはそう言い……スッと、出窓の扉を閉めた。


足音が遠ざかり、もうこの出窓の向こうから山南さんの気配が消えた。


その途端……明里さんは、地面に崩れ落ちた。




< 313 / 522 >

この作品をシェア

pagetop