闇ノ花




溢れた涙を、明里さんは手でそっと拭う。


それから、また無理に笑った。





「山南はん……うちが知らへんって、絶対思っとるさかい……せやからあん人も、うちに嘘をつき続けた」


「……」


「噂、聞いた時……うちかて、嘘やって信じたかった。夢やって、信じたかった。
ここに来れば、いつもの山南はんが出てきてくれはるって、ずっと信じてたんや……。せやけどあん人、死装束着てはったもん……っ」


「……っ」





いつの間にか、私の頬にも涙が伝っていた。





「うちも山南はんに嘘ついた……お互い様や……」





明里さんはそう言いながら、ゆっくりと立ち上がった。




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