闇ノ花
でも私は今、新撰組ではない。
土方さんにいつでも戻ってこいと言われたけど……山崎と敵である事が分かった今、もう戻ることは出来ない。
今の私は、新撰組とは無関係なんだ。
そう自分に言い聞かせながら、唇を噛んで、一歩踏み出す。
屯所の中に入り、苦無を取り出した。
それを、屯所の壁に刺して……よじ登る。
登りながら、苦無を刺しては抜いて。
その作業を、ひたすら繰り返した。
見付かってはいけないから、慎重に行かないと。
それに私は、忍としての強さがほとんどなくなってしまっているから、いつも以上に気を遣わなければならない。
やっとの事で屯所の屋根の上に立ち、ふうっと息をつく。
それから、足音を立てないように、屋根に這いつくばって進んだ。