雨空のポラリス
雨空のポラリス
ひとりぼっちのホームは
嫌いじゃない。
田舎だから、電車は30分に1本。
タイミング悪いと
1時間くらい待たされることもある。
高校の補講授業を終えて帰路につく頃には 真っ暗で、
時々ある街灯の明かりと、民家の明かり、ガソリンスタンドの明かりを頼って 最寄の駅まで歩く。
白い息が、風に流されて消えていくのが面白くて しばらく遊んでみたり。
でもすぐ飽きて、かじかむ足先を回してみたり、手袋をはめた手で前髪を整えてみたり。
今日は、たぶんタイミングが悪いパターンのやつ。
古い改札の横にポツリとある赤いベンチに腰をおろした。横にリュックをドサッと置いて、中にあるホッカイロを袋から出してほぐす。
1番発熱するころには、きっとベッドでぐっすり寝てるんだけど。
はあ…。やることがなくて暇……。
足元にある自分の影を眺めていると、
改札から駅員さんの声がきこえた。
「あれ、祐斗くんまた補講だっのかい?」
……祐斗くん……?
「あは、バレました?もうほんと数学嫌いなんすよー。」
改札口が キキイッと回った音。
「あ、篠田!」
「やっぱり、梶井だったんだー。」
「うん。補講 おつかれー。隣いい?」
「うん。」
リュックを下に降ろして、わたしの隣に梶井が座る。
やっぱり、人ってあったかいんだな。
隣に梶井が座ってるだけで、さっきよりも数倍あったかい。
「で、どうよ、篠田の補講のほうは。」