後輩レンアイ。

「とりあえず俺、このあと見合いがあるんですけど…」

「……見合い?」
イケメン君の声で、急に引き戻される。
そして、数時間前の出来事がよみがえる。


《彼の懐に、潜り込んでほしい。
と言うのも、潜入しろと言っているわけじゃない。
心をつかんでほしいんだ。
君なら簡単だろう?》


ここで見合いでもされて、上手くいったら困るのはあたし。
引き留めるのが…ベスト。

「あたしを、置いていく気?」
「…よかった、いつもの先輩ですね。」

…はぁ?
いつもの、あたしだって?
あたしはいつもあたしだ。
このイケメン君はなにを言っているんだろうか。

「あたしはいつも通りだけど。」
「…なに言ってんだか。
さっきまであんなに怯えてたくせに。」
「………。」

しょうが、ないじゃない。
怖かったんだから。
あたしが弱かったんだから。
死んでもいい、なんて口先だけで、本当は死ぬ気なんて全くなかったって事も。
死にたくないって本音を隠してたことも。
あの子たちのために自分はここまでできるって自己暗示かけてたことも。

全部ぜーんぶ、分かってしまったんだから。
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