後輩レンアイ。

過去は今で消し去って




───龍太side


「…このまま、バックれよーよ。
お見合い。
どうせ政略結婚でしょ?
アンタの気持ちなんて、必要ないんでしょ?
だったらきっと、アンタじゃなくてもいいんだよ。
他の誰かでも務まる事なんて、他の誰かに任せておけばいい。
ほら、行こ?」

先輩は、そう言って手を差し出した。
その手を取るだけで、少しの時間だけでもオレは解放される。

《志堂グループの跡取り》
という肩書きから。
親の期待から。
社交辞令や、汚い部分から。

オレは、抜けだせる。
そんな気がしたんだ。

「でもそんなこと…」
できるわけがない?
オレはそう思った?
違う。
先輩に手を差し出されたとき、今までどうやっても無理だと思ってたことが。

簡単に、できてしまう気がしたんだ。
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