さかのぼりクリスマス


 窓枠に両手をそえて、キラキラとまたたく世界を見つめる。

 一粒一粒の光の点は、どうして静止せずに、ゆらゆらしているんだろう。でも、きれい。


「…すっごいきれい」

「うん、そうだな」


 間近に降ってきた声に、驚いて振り返る。

 瞬間、キスをされた。

 頭をまるごと持って行くように、後ろに回された手。舌に、赤ワインの味。いつもよりちょっと、高級な味。

 窓ガラスに体を押しつけられて、背中がすごくヒヤッとして、でもお腹は熱くて、サトルに触れているから。

 冷たくて、熱くて。二分割の、わたし。


 ヒゲがちくちく刺さるのすら、気にならないくらい頭の奥がぼう、としたころ、手を引かれて、ベッドに倒された。

 乱暴。痛いよ。そんな文句を言うヒマもなく、かぶさる体とふさがれる口。呼吸を確保するので、精一杯の。

 求め合う行為。どこかでまだ、いけないことをしているような幼い心があって、でもサトルは、そういうひっかかりを、流してしまうのが上手。

 すごい勢いで、わたしを大人に仕立ててしまうのが、上手。


「あー……ナナ、好き」


 耳元で突然言われて、胸がキュウウと苦しくなった。

 ふだん、そういうこと言わないくせに。ずるい。こういうときだけ。

 サトルは、ずるい。


「…やばい。ずーっと、くっついときたい」


 サトルの手が、わたしの頭をなでる。

 ものすごく気持ちよさそうな顔で、わたしのこと、ものすごくいとおしいみたいな目で見るから、思わず泣きそうになった。


 ずっと。


 うん、ずっと。一緒にいてね。








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