さかのぼりクリスマス
「野球のライトが土を照らしてて…シン、としてて。静かで。夏だったら、きっとそうは思わないんだろうけど…なんかね。心がスゥッとした」
「…ふーん?」
「うん。なんだろ。人混みのイルミネーションと真逆ってかんじで、いいなぁって」
「ははっ…なんだよそれ」
「高遠くん」
両手を包まれたまま、高遠くんを見る。
「クリスマスだね」
あ。
つめまでジーンと、しみこんできた。高遠くんの、体温。
手だけじゃない。高遠くんの顔も、あったかさがこぼれるみたいにほころんで、やさしくゆるんだ口が、言った。
「おー。来年は、見にいこ。映画と、あと、イルミネーション。街でもやってっし、田舎の方にもすっげーの、あるらしくてさ。電車でも行ける」
「あ、それ聞いたことあるかも!ツリーは、ショッピングモールのがけっこう派手だって」
「お、やばいな。いっぱい行かなきゃなんねーのあるな」
「うん、全部行けるかな」
「行けるだろ」
「本当?」
「ホント」
「一緒に?」
「おー、イッショ」
「…ずっと、一緒?」
「ん、ズット」
「……ふふ、棒読み」
すっかりぬくもった両手が、引き寄せられる。目の前に、高遠くんの顔。
鼻のあたまがくっついて、それはとてもつめたくて。
すぐにくっついた唇は、あたたかかった。