さかのぼりクリスマス
照明がおとされた空間に、広々とあいだを取って、置かれたテーブル。
その上に光るろうそくはおのおの、違ったリズムで揺れていて、それはまるで、カップルごとのリズムに合わせているみたい。
会話のリズム。笑顔のリズム。
「…大学生になる前は、こんな風にすごすなんて、考えてもなかったです」
つぶやいて、シャンパンを口にふくむ。
美味しいとは思うけれど、まだわたしには、ちょっと背伸びした味だ。
「ナナちゃん、お酒飲み始めたのはキッカリ二十歳からって言ってたっけ」
「そうですよー。っていうか、未成年の飲酒は禁止なんです。当たり前」
「はは、すんません」
「…あ。あと、コーヒーも、自動販売機のしか飲まなかったな。カフェとかは…ほら、高校生のころって、1杯で400円ってぼったくりじゃんって思ってて」
「ああ、おれも思ってた」
「ですよね!!缶なら4本飲めるじゃん!って」
「それ、同意」
先輩の息が、ろうそくの火を揺らす。
赤みを帯びた炎は、シャンパンを染める水彩のやくわりをして。小さな気泡の粒が、とても、きれい。
目の前には、コース料理の最初に出てきたシチュー。
とろみのある白いスープの上には、パリッと揚げられた鳥皮がのっていて、それだけでクリスマスムードだ。