さかのぼりクリスマス

 照明がおとされた空間に、広々とあいだを取って、置かれたテーブル。

 その上に光るろうそくはおのおの、違ったリズムで揺れていて、それはまるで、カップルごとのリズムに合わせているみたい。

 会話のリズム。笑顔のリズム。


「…大学生になる前は、こんな風にすごすなんて、考えてもなかったです」


 つぶやいて、シャンパンを口にふくむ。

 美味しいとは思うけれど、まだわたしには、ちょっと背伸びした味だ。


「ナナちゃん、お酒飲み始めたのはキッカリ二十歳からって言ってたっけ」
「そうですよー。っていうか、未成年の飲酒は禁止なんです。当たり前」
「はは、すんません」
「…あ。あと、コーヒーも、自動販売機のしか飲まなかったな。カフェとかは…ほら、高校生のころって、1杯で400円ってぼったくりじゃんって思ってて」
「ああ、おれも思ってた」
「ですよね!!缶なら4本飲めるじゃん!って」
「それ、同意」


 先輩の息が、ろうそくの火を揺らす。

 赤みを帯びた炎は、シャンパンを染める水彩のやくわりをして。小さな気泡の粒が、とても、きれい。

 目の前には、コース料理の最初に出てきたシチュー。

 とろみのある白いスープの上には、パリッと揚げられた鳥皮がのっていて、それだけでクリスマスムードだ。


< 5 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop