Street Ball
強烈に降り注ぐスポットライトは、月や星の存在を完璧に忘れ去っているよう。


フェンスに群がるギャラリーに視線を流すと、一人、また一人と帰っていく姿が目に入る。


オッズが極端に偏っていては、ギャンブル熱も冷めるのだろう。


ギャラリーからの声が少ないお陰で、簡易DJブースからスクラッチの音がはっきりと聞こえる。


先にバッシュの紐を結び始めている二人に続き、俺もジョーダンの紐を締め上げる。


足袋のようなフィット感が生まれないと、素早いプレーには付いていけなくなるのだ。


「勝ってよ双英。」


店内に残っている翠は、そう言って真剣な眼差しで見つめてくる。


「勿論。」


敗者復活戦の、最後の一回戦が始まりを告げようとしていた。
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