Street Ball
「サンキュ。」


泰二にライターを返すと、そのまま自分もタバコに火を付け、滑りの悪い磨り硝子の窓を少し開ける。


部屋に入り込む夏の夜風は生暖かく、酔いに拍車をかけていくような気がした。


「最後にコートへへたり込んだ、あの赤毛の顔見たかよ。」


「見た見た。やっと試合が終わってくれたって顔してたよな。」


鉄の問いに答える泰二の二人に、俺もあの光景を思い出していた。


最初に見せていた余裕顔は何処かへ消え去り、信じられないといった表情で、呼吸をしているのが精一杯という顔だった。


「勝ったんだな…。」


試合終了後に感じた勝利とは、また違う勝利の意味を改めて噛みしめた。


俺と泰二が勝利の余韻に浸る中、鉄だけが不満顔のままビールを呑んでいる。


「次の試合で、今日の借りは返すからな。」
< 158 / 410 >

この作品をシェア

pagetop