Street Ball
小学校低学年の頃に、もう名前も思い出せない奴が遊びに来た。


遊ぶ物と言えば、バスケットボールしか無い部屋で、暇を持て余した其奴はそそくさと帰っていったのだけを覚えている。


小学生の頃なんて、最新のゲーム機が有る家に入り浸るもんだ。


そんな事は子供ながらに分かっていても、お袋に買ってくれと強請るのは、新しいバスケットボールだった。


学校帰りに流されて、皆が入り浸っている奴の家に行った事も有る。


頭を金髪に染めた筋肉質な男と、宇宙人らしき奴がテレビという箱の中で戦っていた。


勿論、その二人を操作していたのは、テレビの前に陣取った同級生二人。


面白いから夏目もやってみろと言われて、試しにやってみたが当然のように俺の負け。


負けた悔しさは確かに有ったが、他の奴のようにテレビにかじり付こうとは思わなかった。


悔しさ以上に、面白いとは思えなかったんだ。


そんな思い出が有ったから、この部屋に人が集まる事に抵抗したのかもしれない。
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