Street Ball
いや、狙わされていたと言って良いのかもしれない。


鉄にリバウンドで勝った男を相手にして、誰がドライブからのゴール下を狙うだろうか。


泰二の3Pシュートを片手で掴んでいる優男は、そのまま泰二へボールを返した。


ボールを返された泰二は、空を見上げて大きく深呼吸している。


「富さん、あの優男って誰…。」


左から右へバックチェンジ、右から左へレッグスルーでボールを返し、動きに勢いと弾みを付けた泰二は、そのまま左サイドから切れ込んでいった。


「ん?あぁ、彼奴の事か。」


レイアップに見せかけて急停止した泰二は、右手で優男をガードしながら、身体を横にして伸ばした左手でフックシュートを放った。


ボールはリングに当たったが、入るか入らないないかでリングの縁を彷徨っている。


急停止した反動が抜けきらない泰二の身体は流れ、リングに嫌われたボールを取りには行けなかった。


「彼奴は去年と一昨年と、確かその前もだっけか?今やってる大会で優勝してるチームのエースで、あのコートの中じゃ俺が唯一上手いと思う奴だよ。」
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