Street Ball
ほんの一瞬振り返っただけの間に、目敏く俺と視線を合わせ、アキは笑みを送ってきた。


…クソッ。敗者復活戦の決勝なんかで手こずってる、俺等の様子が面白いってのかよ!


ドリブルをカットしに来たニキビ面を、バックチェンジ一発で躱す。


二連発を使わなかったのは、手の内を晒すようで嫌だったからだ。


位置を変えて3Pを打つものだと思い込んでいたニキビ面を抜き去り、ゴール下に突き進んでいく。


ゴール下で剃り込みが待ち受けていたが、それまでの勢いを殺して真上に飛んだ。


同じくシュートブロックに飛んだ剃り込みの裏をかき、そっと鉄にボールを手渡す。


水を得た魚のように、登場したアキへの叫声をかき消す、鉄の雄叫びが轟いた。


吠えながら両手でリングにぶら下がる鉄。


30対32。


リングから手を離し、コートへ着地した鉄と、夜空に響く力強いタッチを交わした。
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