Street Ball
作った笑顔で誤魔化し、遠くを見つめるような表情の碧。


それは[エデン]で見せた、昔を思い出していた時と同じだった。


懐かしさに目を細め、喜ばしい思い出には目尻を下げる。


…そして、帰らぬ時を恨むように、思い出から抜け出そうと鼻で笑うようにして現実へ戻る。


沸き上がっていた怒りは削がれ、碧を抱きしめた。


悲しそうな表情をされたら、俺にはこうする以外に何も思い付かなかった。


時間が経ち、雨に濡れ、香気の薄くなったベビードール。


乾きを取り戻し始めた黒髪からも、フローラルの香りが立っている。


そのまま他愛もない寝物語を経て、窓に朝の光が射し込んできた頃、二人で眠りに落ちた。


肌と肌の擦れる感触が心地良く、体内に残るアルコールが手伝い、深い深い眠りだった。
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