Street Ball
模糊
汗を拭きながら支度を終え、三人で店内へと続くドアを開いた。


興奮が冷めぬのは、店内に残るギャラリーも同じようだった。


「富さん、じゃあ二週間後に、またね。」


「まさか[HEAT]が本戦の準決勝まで行くとはな。ま、頑張れよ。」


そう言うなら、少しは雑誌から視線を外せば良いのに…。


初めて[SB]を訪れた時から、富さんが感情を表した様子を見た事がない。


口調も平板なまま、レジ奥のパイプ椅子に座り、雑誌を眺めているだけ。


バスケ好きなら、試合が始まればあーだこーだと言う人間が殆どなんだけどな…。


何にも興味を示さない不思議な人。


それが初めて会った時からの、富さんの印象だった。


先に[SB]を出て行った二人から少し遅れて、俺も自動扉から外に出た。
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