Street Ball
29対21。


取られてはいけない場面で鉄にリバウンドを奪われた事が、和志の気持ちを煽ったのだろう。


敵ながら、気迫の籠もった良いプレーだった。


それが分かっているから、俺と泰二も鉄を責めたりはしない。


寧ろ、鉄のカバーに行けなかったと自分を責める。


気持ちを切り替え、今度はオフェンス。


泰二の得意な回転を使ったパスは、空いたスペースに抜けていき、惑わされた長髪を後ろに付けながらドライブ。


摩訶不思議とも見える泰二のパスに、初めて見たギャラリーから驚きの声が上がる。


チームプレーが未だ不安定だった、敗者復活戦の第一試合では使わなざるを得なかったが、出来れば泰二のスピンパスは、決勝まで隠し球として取っておきたかった。


だが、この試合を勝たなければ決勝もない。


この際、出し惜しみはしない。


そうしなければ、このチームに勝つ事は不可能に思えた。
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