Street Ball
額を流れる汗を、Tシャツの袖で拭いながらディフェンスに付く。


タンクトップから和志、和志から長髪にボールが渡る。


たったそれだけのパスワークでも、ボールチェックとディフェンスのチェックで、小刻みに身体を動かさなければならない。


この時間までくると、体力は残り僅か…。


パスワークで体力が削られていくのは痛い。


長髪のドライブは途中で止まり、ゴール下の和志へパスが渡る。


汗で手が滑ったのか、和志の零したボールを、力業で鉄が奪った。


「泰二!」


鉄は直ぐに、3Pラインを超えている泰二にボールを戻した。


クイックなシュートモーションで3Pを放つのかと思われたが、泰二はモーションの途中でシュートを諦めたようにドリブルを始めた。


夜空を指す人差し指を上げたかと思うと、カットされないように鋭いパスが俺の元へ届く。


DJブースからHIPHOPビーツが流れているものの、人の声はどこからも聞こえてこない。


試合の流れを止め、俺と長髪の1on1を作ってくれた泰二。
< 331 / 410 >

この作品をシェア

pagetop