Street Ball
「そうか…。」


車を降りてきた時は怒っているように見えたが、今は色が抜け落ちたように何とも言えない表情をしている。


「そうかじゃねーよ!最初から俺達やギャラリーをハメるつもりだったのか?どうなんだよ富さん!」


掴みかかった俺に、片足立ちの富さんは大きく揺すぶられた。


そして揺さぶられている間に、口角が左右に上がった。


不気味と思える笑み…。


背筋が凍るような笑みを見て、思わず掴んでいた首元を離した。


「そうだよ。最初からそのつもりであの店を開いたんだ。」


機会仕掛けの人形が喋っているように、富さんの口調には変化がない。


「何でそんな事を…俺はあのコートを見つけた時、バスケの出来る場所が在って心底嬉しかったのに…。」


「それだよ。その顔が見たくてあの店を、店の横にはコートまで作ったんだ。俺なりの、バスケに対する復讐だよ。」


あの時の嬉しさと裏切られた思いが混ざり合って、涙の零れそうな俺の肩にアキの手が乗った。
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