Street Ball
「無駄だよ。富さんの心の中は、憎しみで凝り固まってるんだ。富さん、どうしてこうなったのか、夏目には聞く権利が有ると思う。」


富さんはバスケが好きだから[SB]を、コートを作ったんだと思ってた。


でも、嫌いだから?いや、復讐心からって…。


「俺もお前のように、バスケが全てだった時が有ったよ。誰よりも早く体育館に行って、誰よりも遅くまで練習してた。誰よりも上手くなりたくてな。その甲斐有って、全日本にも選ばれる所だった。」


それまでの昔を思い出す表情から一変し、憎しみの面を付けたように、富さん全体から憎悪の雰囲気が溢れ出したようだった。


「全日本の監督も見に来てた練習試合は、滅多に見れない程に接戦だった。全日本に選ばれるかどうかの瀬戸際だ。俺はどうしても勝ちたかった。無理な体勢で取ったリバウンド…残り時間の少なさも考えれば、速攻を出せば勝てる試合だと思った。死に物狂いで取ったリバウンドだったからな、着地までを考えてなかった。それで、右足はこの様だ。」


全く動かない右足を、じっと見つめる富さん。


サングラス越しでも、強く睨んでいるのだと分かる。
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