Street Ball
「自分の女が他の奴に抱かれても、アンタ何とも思わないのかよ!」


理解出来ない。そうさせてる富さんもだが、それに従っている碧も理解出来ない。


「良いのよ。私がそれで良いと思ったから、この人の為になると思ったからそうしたの。」


ヒールの底を鳴らしながら、両手に荷物を持った碧が現れた。


白いバン、アキの言葉、碧の荷物…三人で何処かに逃げるつもりだったに違いない。


「じゃあ、俺に近付いたのも…。」


碧は、一瞬だけ目を伏せて頷いた。


代わりに口を開いたのは富さんだった。


「復讐はあの場所に来ていた人間が、バスケを恨む事。準備なんてとっくに出来てたから、問題は実行に移すタイミングだけだったんだよ。」


警察に捕まった過去が出来れば、誰だってバスケに苦い思い出が出来る筈だ。


現に俺だって、[SB]の裏側を知ってバスケをするのを諦めたのだから。


それは、ギャンブルやマリファナやドラッグに溺れた者も同じだろう。


「俺と似ているお前のプレーを一目見た時に、長年考えてきた復讐を遂げるタイミングが来たと思った。だからあのコートから離れられなくする為に、お前にも碧を付けた。計算外だったのは、肥大していったロンの妄想だ。全部俺がお膳立てしてやったくせに、それを忘れやがって。」
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