Street Ball
自分と似たプレイヤーの現れに、富さんは昔の自分を重ね合わせてたのか。


全ては、悪いタイミングが重なって訪れたんだ。


碧が自分との関係を気にしなくて良いと言ったのは、富さんの命令だったから。


意外と、それに対しての腹立たしさは無かった。


ただ、そうまでして富さんに従っている事に、理解出来ないとしか答えが出ない。


「それで、ロンの奴をどうしたんだ?」


「[SB]に来ていた仕入れ業者に頼んで、日本から連れてって貰ったよ。今頃は船の上だろう。船から下りたら、マリファナの栽培をさせるって言ってたな。」


あんな奴に同情はしたくないけど、少しだけ可哀想な気もした。


「長年復讐の時を待っていたのに、アキの所為で不完全に終わったとはいえ、嬉しさなんて殆ど感じられない。終わってみれば、虚しさだけだ…。」


痛々しそうな右足を引きずりながら、富さんはその言葉を最後にバンへ戻っていった。


長年考えていた復讐を遂げても、気が晴れなかったと言う富さん。


復讐なんて、遂げてみればそんなものなのかもしれないな…。
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